胃・十二指腸の病気について
胃と十二指腸は上部消化管と呼ばれており、食物の消化という機能を担っています。胃や十二指腸は強い酸性の胃酸やピロリ菌感染による問題が起こりやすい場所です。ここでは、胃と十二指腸の代表的な疾患について解説しています。
慢性胃炎
胃粘膜の炎症が慢性的に続く病気で、主な原因はピロリ菌感染だとわかっています。進行すると胃の粘膜が萎縮して胃がんリスクを高めてしまいますので、ピロリ菌感染がある場合には除菌治療をおすすめしています。
代表的な症状には胃もたれ、胸やけ、膨満感、食欲不振などがありますが、粘膜の状態が悪くても症状に乏しいことがありますので内視鏡検査で粘膜の状態を確かめることが重要です。検査で確かめられた炎症の状態によって適切な薬の処方を行います。また、ピロリ菌感染がある場合には、除菌治療が成功することで症状改善だけでなく炎症の再発を抑制できます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
どちらも主な原因はピロリ菌感染やストレス、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用です。潰瘍は粘膜が弱くなった部分を胃酸が傷付け、深い傷になっている状態です。
代表的な症状には、胸やけ、膨満感、食欲不振、上腹部やみぞおちの痛みなどがあり、潰瘍部分に出血があると黒っぽいタール便、吐血、下血、貧血といった症状が現れます。胃と十二指腸は胃カメラ検査で粘膜の状態を直接確かめることができますので、潰瘍の状態を確認して適切な薬の処方を行います。ピロリ菌感染がある場合には、症状改善だけでなく再発を抑制できる除菌治療をおすすめしています。
胃がん・十二指腸がん
粘膜の細胞ががん細胞に変化して発症し、増殖することで進行していきます。十二指腸がんは発症率が低いのですが、胃がんの発症率は長く高い状態が続いており、日本でのがん患者における胃がんの割合は、厚生労働省の2012年統計で2位と報告されています。胃がん、十二指腸がんの両方とも早期の症状に乏しいため、早期発見には定期的な内視鏡検査が不可欠です。早期発見につながる他の例としては、炎症や潰瘍の症状で受診して粘膜の状態を内視鏡検査で確認して見つかるケースです。そのため、慢性的な症状があったら専門医を受診することが重要です。その際にはがんリスクを上昇させるピロリ菌感染の有無も調べてもらい、感染がわかったら除菌治療を受けるようにしてください。
内視鏡検査で胃がんや十二指腸がんが発見された場合、CT検査でがんの進行状態を精密に調べ、進行度に合わせた適切な治療を行います。早期発見できれば侵襲が少なくお身体や生活への影響が少ない治療で完治も可能です。
胃ポリープ
ポリープは粘膜のできもので、大腸ポリープと違い、胃ポリープががん化することはほとんどありません。また自覚症状が起こることも少ないため、検診の際に偶然発見されることが多くなっています。内視鏡検査では組織採取ができるため、発見したポリープが良性かどうかの確定診断が可能です。サイズや場所にもよりますが良性であれば経過観察のみで特に治療の必要はありません。まれですが、がん化リスクがあるもの、出血や狭窄につながる可能性のあるなどの場合には、ポリープの切除を検討することもあります。
胃粘膜下腫瘍
粘膜よりも下の部分にできる腫瘍で、良性と悪性、どちらの可能性もあります。粘膜の下にあるため内視鏡検査だけでなく、確定診断には超音波検査やCT検査なども必要になることがあります。悪性の場合には切除による治療が行われます。良性の場合には定期的な経過観察を行っていき、大きさや形態の変化があった場合には切除を検討することもあります。
急性胃粘膜病変
急性胃炎や急性胃潰瘍の総称で、胃粘膜にびらんや潰瘍、出血などを起こしている状態を指します。代表的な症状は、激しい上腹部やみぞおちの痛みが突然起こる、強い吐き気や嘔吐、吐血、黒っぽいタール便、貧血などがあります。急激に悪化して強い症状を起こすため、入院による治療が必要になることもあります。
主な原因は、アルコールや唐辛子など刺激の強いものの過剰摂取、ストレス、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用、アニサキス、そしてピロリ菌感染です。
内視鏡検査で粘膜の状態を調べ、止血処置や病変の組織採取を行います。アニサキスの寄生によって起こっている場合には、内視鏡でアニサキスを除去することで症状が速やかに改善へ向かいます。それ以外のケースでも、適切な薬の服用で比較的短期間に症状改善が可能です。ピロリ菌感染が確認されたら、除菌治療により再発を抑制することもできます。