肛門科

肛門科について

トイレ肛門の病気の主な症状として、出血、痛み、肛門の痒み、脱出、腫れ、などがあります。主なものは、痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(肛門周囲膿瘍)です。イボ痔や切れ痔の出血の多くは鮮血(鮮やかな赤)であることが多く、黒みがかった赤や便に混ざった血は、大腸がんなど痔核以外の病気の可能性があります。肛門の病気は問診、指診、肛門鏡検査などで行います。最近では、3人に1人の割合で痔に罹患しているとも言われ、決して珍しい病気ではありませんが、痔の症状には直腸がんや肛門がんなど、重篤な病気が隠れていることもあります。

肛門疾患に多く見られる症状

肛門のふくらみ・出っ張り

痔核、脱出を伴う内痔核、肛門ポリープ、直腸が脱出する直腸脱、大腸ポリープなどが疑われます。大腸ポリープの場合、大腸がんに進行する可能性もあるため早めに受診してください。

肛門からの出血

痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、潰瘍性大腸炎、クローン病などが疑われます。
肛門科受診のきっかけとして最も多い症状ですが、血便や下血といった大腸疾患によるものの可能性もあるため医師による慎重な検査と診断が必要です。

肛門の痛み

裂肛(切れ痔)、嵌頓(かんとん)痔核(いぼ痔)、血栓性外痔核(いぼ痔)、肛門周囲膿瘍(のうよう)などが疑われます。痛みをできるだけ早く解消するためにも、早めにご相談ください。

肛門のかゆみ

肛門周囲皮膚炎、カンジダ菌や水虫と同じ白癬(はくせん)菌などの真菌(カビ)感染が疑われます。感染症の場合、きちんと治るまでしっかり治療を受けることが重要です。

肛門の病気について

肛門ポリープ

皮膚である肛門と粘膜である直腸の境には歯状線があります。歯状線には肛門乳頭という細長いデコボコが並んでいます。この肛門乳頭部分に肥厚やしこりができるのが肛門ポリープです。ある程度の大きさになると、排便時の出血や脱出が起こるなど、内痔核(いぼ痔)と同じような症状を起こし、強い残便感、常に排便したい感覚、かぶれやかゆみなどを起こすこともあります。肛門ポリープはサイズや形状がさまざまな炎症性や繊維性のできものであり、大腸ポリープのようにがん化することはありません。
原因は、下痢や便秘など排便異常を繰り返す、切れ痔・いぼ痔・痔ろうなどによる慢性的な刺激、炎症などとされています。治療には切除が必要です。

肛門皮垂

鶏のトサカのような皮膚のたるみが肛門周辺にできた状態です。肛門の一時的な腫れが起こって、その後萎縮した後、伸びた皮膚が戻らずに垂れさがってしまうものです。保存療法では解消することはできません。清潔を保つことが難しくかぶれやすいことから切除をおすすめしています。

肛門周囲皮膚炎

肛門周辺の皮膚が炎症を起こしている状態で、主な原因はアレルギー性疾患、カンジダなどの真菌症、痔核・裂肛・ポリープ・肛門皮垂などの肛門疾患です。排便後の拭き過ぎ、洗浄し過ぎなど、過度に清潔を求めた結果、発症することも増えています。治療では、原因に合わせた内服薬や軟膏を処方します。真菌(カビ)による炎症の場合、通常の軟膏を使うと悪化してしまうため、しっかり検査して状態に合う治療を受けることが重要です。清潔を保つことは重要ですが、過度に手入れをすると悪化させてしまうためご注意ください。

肛門科診療の流れ

Step1問診

診察室で医師が丁寧に問診しています。症状や排便の頻度と状態、生活習慣、ライフスタイル、お悩みの点などについてくわしくうかがっていきます。既往症や服用されている薬の有無、その種類などもお尋ねしますので、お持ちの方はお薬手帳を必ずご持参ください。飲んでいる薬をそのまま持ってきていただいても構いません。

Step2視診と指診

診察台で横向きになり、膝を曲げます。着衣を脱ぐ必要はなく、お尻が見える程度に下着を下ろしたら大きなタオルをかけ、必要な分だけ医師がタオルをめくって診察します。
指診ではゴム手袋の指に麻酔ゼリーをたっぷり塗ってから行っているため、痛みや不快感はほとんどありません。指診では、肛門内のしこりやポリープの有無や状態、狭窄がないかなどを調べます。

Step3肛門鏡検査

当院ではデジタル肛門鏡を使用しています。麻酔ゼリーを塗った筒状の器具を肛門から挿入し内部を観察します。ご説明の際には状態を画像で確認いただけるようにしています。

Step4診断と説明

検査結果を踏まえて医師が状態をわかりやすくご説明します。なお、結果によってはさらに大腸内視鏡検査などが必要な場合もあります。診断結果のご説明後は今後の治療方針をご相談し、ご納得いただいた治療を行っていきます。

痔核(いぼ痔)

痔核とは、肛門付近の血流が悪くなり血管が鬱血し静脈がこぶ状に膨らんだ状態です。症状としては、肛門周囲にイボに似た出来物が生じるほか、排便時に出血が見られるようになります。なお、痔核は場所によって、内痔核と外痔核に分けられます。

 内痔核

内痔核肛門の歯状線(直腸と肛門の境)より内側に生じた痔核で、初期は出血する程度で、痛みをほぼ感じませんが、痔核が大きくなると脱出(脱肛)することがあります。

外痔核

肛門の歯状線の外に生じた痔核のことです。肛門周囲の血流が悪くなることが発症の主な原因です。肛門周囲の血管に血栓が詰まって血流がうっ滞することで、肛門の外側に血まめができることもあります。

治療には保存療法と手術療法があります。多くは薬物療法(経口薬や注入軟膏・坐薬、緩下剤の服用など)で治りますが、大きくて痛みが強いもの、血の塊を取り除く必要がある場合は手術療法も検討されます。その他、便秘の改善や排便時の長時間のいきみを避けて、規則正しい排便習慣をつけることが重要で、飲酒や冷えも痔核の悪化の原因と考えられています。お風呂に入って温めるのも効果的です。

切れ痔(裂肛)(急性・慢性)

切れ痔肛門上皮が便秘や下痢などにより切れてしまうことを裂肛と言います。症状としては痛みや出血などです。治療については、薬による排便のコントロール、軟膏や座薬による治療を行います。薬で改善の傾向が見られない場合は、手術療法も考慮します。

痔瘻

痔瘻直腸・肛門周囲膿瘍(直腸・肛門部とその周辺の皮下、粘膜下、筋間などに膿が溜まった状態)が自潰もしくは排膿して瘻管(トンネルのようなもの)ができた状態が痔瘻です。診断としては問診、指診、肛門鏡が有用で索状物を触知や瘻孔(トンネルの入り口や出口)を確認します。

痔瘻の治療は保存的治療が難しく手術が基本となります。痔瘻の入り口である原発口の切除と感染の原因となった原発巣の切除、そして適切なドレナージ(膿や浸出液などの排液が通る逃げ道)の作成が重要です。

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